瓦屋根のひび割れ補修の費用は、軽いひびをコーキングで埋めるなら1か所3,000〜5,000円程度、割れた瓦を差し替えるなら1枚あたり数千円〜2万円程度が目安です。数か所をまとめて直す部分補修なら、総額3万〜10万円ほどに収まるケースが多くなります。
ただし足場が必要な場合や、下地まで傷んでいる場合は費用が大きく上がります。
「瓦にひびが入っているけれど、いくらかかるのか見当がつかない」「小さなひびなら放っておいても平気なのか」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。瓦は地上から見えにくく、気づいたときには雨漏りが始まっていることもあります。
この記事では、ひび割れ補修の工法別の費用相場、見積もりの内訳、費用が上がる条件を整理します。あわせて、火災保険の使い方、DIYの危険性、業者選びのポイントまで順に解説します。読み終えるころには、ご自宅の状態に合った直し方と、適正な予算の目安がつかめるはずです。
瓦屋根のひび割れ補修の費用相場はいくら?
瓦屋根のひび割れ補修の費用相場は、部分補修なら数千円〜10万円程度、下地まで直す工事なら65万円以上です。どこまで傷んでいるかによって、必要な工事と金額の桁が変わります。
ひびが瓦の表面だけにとどまっていれば、補修は小規模で済みます。一方で、割れ目から入った雨水が防水シート(ルーフィング:瓦の下に敷く防水用のシート)や野地板(のじいた:屋根の下地になる板)を傷めている場合は話が別です。その場合は瓦をいったん外す大がかりな工事が必要になります。
まずは工法ごとの相場を一覧で確認しましょう。金額は一般的な木造2階建て住宅を想定した目安で、屋根の形や勾配、瓦の種類によって前後します。
| 工事内容 | 向いている症状 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| コーキング補修 | 幅の細いひび・小さな欠け | 1か所 3,000〜5,000円程度 |
| 瓦の差し替え(1枚) | 割れ・大きなひび | 1枚 数千円〜2万円程度 |
| 複数箇所の部分補修 | ひびや割れが数か所ある | 総額 3万〜10万円程度 |
| 足場の設置 | 急勾配・2階屋根・広範囲 | 別途 15万〜25万円程度 |
| 葺き直し | 下地や防水シートが劣化 | 65万〜150万円程度 |
| 葺き替え | 瓦も下地も寿命を迎えた | 80万〜250万円程度 |
表のとおり、同じ「ひび割れ」でも数千円で済む場合と、100万円を超える場合があります。この差を生むのは、ひびの大きさよりも「雨水がどこまで入り込んだか」です。早めに見つけて小さいうちに直すことが、費用を抑えるいちばんの近道になります。
- ひびが1〜2か所で表面だけなら、数千円〜数万円で収まりやすい
- 割れて欠けた瓦は、コーキングより差し替えが基本になる
- 2階の屋根や急勾配の屋根は、足場代が上乗せされやすい
- 室内に雨染みが出ていれば、下地補修を含めた見積もりを想定する
ひび・割れ・欠けで補修費用は変わる?
ひび・割れ・欠けは、症状の重さによって補修方法が変わるため、費用も変わります。表面の細いひびならコーキングで対応できますが、瓦が完全に割れたり欠けたりしている場合は差し替えが必要です。
見分けの目安として、ひびは瓦がつながったまま線が入っている状態です。割れは瓦が2つ以上に分かれた状態、欠けは角や端の一部がなくなった状態を指します。割れや欠けは瓦の防水機能が大きく損なわれているため、コーキングでふさぐより、新しい瓦に替えるほうが確実です。
ひびの段階で直せば、費用は1か所数千円程度で済むことが多くなります。割れや欠けに進むと差し替えが必要になり、1枚あたりの費用が上がります。症状が軽いうちに対応することが、結果として出費を抑えることにつながります。
葺き直しの詳しい費用や工程は瓦屋根の葺き直し費用の相場と内訳で、葺き替えについては瓦屋根の葺き替え費用の相場と工法で解説しています。
瓦屋根のひび割れはなぜ起こる?主な原因は?
瓦屋根のひび割れの主な原因は、台風の飛来物や地震などの外からの力と、凍結や経年による瓦自体の劣化です。原因によって、ほかの瓦にも被害が広がっているかどうかが変わります。
粘土瓦は陶器と同じく焼き固めた素材で、それ自体はとても長持ちします。しかし、硬い反面、強い衝撃が一点に加わると割れやすい性質があります。また、セメント瓦(セメントと砂を固めて作る瓦)は年数がたつと表面の塗膜が傷み、素地がもろくなってひびが入りやすくなります。
代表的な原因を整理すると、次のようになります。
- 台風や強風で飛んできた物が瓦に当たる
- 地震の揺れで瓦同士がぶつかる、ずれて負荷がかかる
- ひびに入った水分が冬に凍って膨らみ、割れを広げる(凍害)
- アンテナ工事や太陽光パネル設置の際に踏まれる(踏み割れ)
- 大雪の重みや、雹(ひょう)が強く当たる
- 瓦を留める釘がさびて膨らみ、釘穴まわりを押し広げる
なかでも見落とされやすいのが、工事の際の踏み割れです。アンテナ設置や雨樋の修理など、屋根に人が上る作業のあとにひびが見つかることは珍しくありません。瓦は谷の部分や重なり部分以外を踏むと割れやすいため、慣れない人が歩くと被害が出やすくなります。
台風は日本の屋根にとって大きな脅威です。気象庁の台風とはによると、台風は最大風速がおよそ17m/s以上に発達した熱帯低気圧を指します。この規模の風が吹くと、庭木の枝や看板などが飛ばされ、瓦を直撃することがあります。
台風が過ぎたあとに瓦の破片が庭に落ちていたら、屋根のどこかが割れている可能性を疑いましょう。
凍害は、寒冷な時期に気温が氷点下になる地域で起こりやすい現象です。小さなひびに入り込んだ水が凍ると体積が増え、内側から割れを押し広げます。これを繰り返すと、最初は髪の毛ほどだったひびが、やがて瓦を貫く割れに育つことがあります。
瓦のひび割れはどうやって見つける?自分でできる確認方法は?
瓦のひび割れは、屋根に上らず、地上や室内から異変のサインを確かめる方法で見つけるのが基本です。自分で屋根に上るのは危険なので避けましょう。
屋根の上は直接見えにくいものの、ひび割れには周囲に現れるサインがあります。たとえば、庭や駐車場に瓦のかけらが落ちていれば、屋根のどこかが割れている可能性があります。また、2階の窓から1階の屋根が見える家なら、窓越しに瓦の状態を確かめられます。
- 家のまわりに瓦の破片や、白い漆喰のかけらが落ちていないか
- 地上から双眼鏡で見て、瓦の列が乱れていないか
- 2階の窓から見える下屋(げや:1階部分の屋根)に割れがないか
- 天井や押し入れの天井板に、雨染みやカビが出ていないか
- 雨の日に、天井裏から水の音がしないか
室内の雨染みは、すでに雨水が下地を越えて入り込んでいるサインです。この段階では瓦の補修だけでは足りず、下地の補修が必要になる場合があります。染みを見つけたら、早めに点検を依頼しましょう。
なお、セルフチェックでわかるのは、あくまで目立つ異変だけです。細いひびや、瓦の重なりの奥にある割れは、屋根に上って近くで見ないと判断できません。築10年を過ぎたら、異変がなくても専門業者の点検を受けると安心です。
瓦のひび割れを放置するとどうなる?
瓦のひび割れを放置すると、雨水が下地に入り込み、雨漏りや木材の腐食につながって修理費が大きく膨らむおそれがあります。ひびが小さいうちは雨漏りしなくても、内部では劣化が進んでいることがあります。
瓦屋根は、瓦だけで雨を防いでいるわけではありません。瓦が雨の大部分を受け流し、すき間から入ったわずかな水を下の防水シートが止める「二重の構え」になっています。そのため、瓦が1枚割れてもすぐには雨漏りしないことが多いのです。
しかし、割れ目から入る雨水の量が増えると、防水シートへの負担が一気に大きくなります。防水シートが劣化して穴が開くと、水は野地板や垂木(たるき:屋根を支える斜めの角材)に達します。木材が湿った状態が続くと、腐朽やカビ、シロアリの被害を招くこともあります。
- 天井や壁に雨染みができ、室内に雨漏りが発生する
- 野地板や垂木が腐り、屋根の強度が落ちる
- 湿気によってカビやシロアリが発生しやすくなる
- 割れた瓦の破片が強風で落下し、人や車を傷つける
- 部分補修で済んだはずが、葺き直しや葺き替えが必要になる
とくに注意したいのが、瓦の破片が落ちる危険です。割れた瓦は固定が弱くなっており、強風のときにずれたり、破片が飛んだりします。通学路や駐車場に面した屋根なら、周囲の安全のためにも早めの対応が求められます。
修理費用の面でも、放置は得になりません。数千円で済むはずのひびが、数年後には下地の補修を含めて数十万円の工事になることもあります。雨漏りが起きたときの修理費用は瓦屋根の雨漏り修理費用の相場で詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
瓦屋根のひび割れ補修にはどんな方法がある?
瓦屋根のひび割れ補修の方法は、主に「コーキング補修」と「瓦の差し替え」の2つです。下地まで傷んでいる場合は、葺き直しや葺き替えといった広範囲の工事を検討します。
コーキング補修とはどんな方法?
コーキング補修とは、ひびの部分に防水性のある充填材(コーキング材)を埋め込み、すき間をふさぐ方法です。材料費がほとんどかからず、作業も短時間で終わるため、もっとも安く済む補修方法です。
ただし、コーキングはあくまで応急的な性格が強い補修です。充填材は紫外線や雨風で少しずつ劣化するため、数年おきに点検や打ち直しが必要になることがあります。また、ひびの上に跡が残るので、見た目にこだわる方には不向きです。
割れが大きい場合や、瓦が欠けて形が崩れている場合は、コーキングでは十分に直せません。無理に埋めると、かえって雨水の流れをせき止め、別の場所から水が入る原因になります。
瓦の差し替えとはどんな方法?
瓦の差し替えとは、割れた瓦を取り外し、同じ形の新しい瓦に交換する方法です。ひびの跡が残らず、瓦本来の防水性と耐久性を取り戻せるのが利点です。
費用はコーキング補修より高くなります。新しい瓦を取り寄せる必要があり、周囲の瓦をいったん浮かせて差し込む手間がかかるためです。また、製造が終了した瓦は同じ品が手に入らず、形や色が近い瓦や、解体現場から出た中古瓦で代用することがあります。
なお、新築時やリフォーム時の余り瓦を保管している場合は、それを使えるか業者に伝えましょう。材料費がかからず、色合いもそろいやすくなります。
葺き直し・葺き替えが必要なのはどんなとき?
葺き直し・葺き替えが必要なのは、ひびが原因で下地まで傷んでいるときや、屋根全体が寿命を迎えているときです。葺き直しは既存の瓦を再利用して下地だけを新しくする工事で、葺き替えは瓦も含めてすべてを新しくする工事です。
粘土瓦そのものは長持ちしても、防水シートは20〜30年ほどで劣化が進むといわれています。築年数が長く、あちこちにひびやずれが出ているなら、部分補修を繰り返すより、まとめて下地を直したほうが結果的に割安になることがあります。
補修工事はどんな流れで進む?
ひび割れ補修の工事は、現地調査から始まり、見積もりの確認、施工、完了報告という順で進むのが一般的です。小規模な補修なら、調査から完了まで1〜2週間ほどが目安になります。
| 補修方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| コーキング補修 | 安い・短時間で終わる | 跡が残る・耐久性が低い・大きな割れには不向き |
| 瓦の差し替え | 見た目がきれい・耐久性が戻る | 瓦の取り寄せが必要・廃番だと色が合わないことがある |
| 葺き直し | 既存の瓦を活かして下地を一新できる | 費用が高い・工期が長い |
| 葺き替え | 屋根全体を新しくできる | もっとも費用が高い |
どの方法が合うかは、ひびの位置や範囲、築年数によって変わります。棟や軒先など部位によって役割も異なるため、瓦屋根の構造と各部位の名称もあわせて知っておくと、業者の説明を理解しやすくなります。
ひび割れ補修の見積もりの内訳は?費用が変わる要因は?
ひび割れ補修の見積もりは、材料費・施工費(人件費)・諸経費・足場代の4つで構成されるのが一般的です。小規模な工事ほど、材料費より人件費や諸経費の割合が大きくなります。
瓦1枚の材料費は、一般的な粘土瓦で500〜2,000円程度です。コーキング材に至っては数百円で済みます。それでも補修費用が数万円になるのは、高所作業に慣れた職人が現地に出向き、安全を確保しながら作業する必要があるからです。
- 材料費:交換用の瓦、コーキング材、固定用の釘や金具など
- 施工費:職人の人件費。1日あたり2万〜3万円程度が目安
- 諸経費:交通費、現場管理費、廃材の処分費など
- 足場代:必要な場合のみ。家の大きさや形で変わる
- 下地補修費:防水シートや野地板の交換が必要な場合
見積書で「廃材処分費 0円」と書かれていても、実際には諸経費に含まれていることがあります。項目の書き方は業者ごとに違うため、総額だけでなく、何にいくらかかっているのかを確認することが大切です。
費用を左右する要因としては、次のようなものがあります。
- ひびや割れの数と、屋根のどこにあるか
- 屋根の勾配(傾き)の急さと、何階の屋根か
- 瓦の種類と、同じ瓦が今も手に入るかどうか
- 下地や防水シートまで傷んでいるかどうか
- 足場を組む必要があるかどうか
足場の有無は、費用に大きく影響します。1階の屋根で勾配がゆるければ、はしごだけで作業できる場合があります。一方、2階の屋根や急勾配の屋根では、職人の安全確保のために足場が必要になることが多く、補修本体より足場代のほうが高くなることもあります。
ひび割れ補修の費用は症状別にどれくらい?ケース別の目安は?
ひび割れ補修の費用は、足場の有無と下地の傷み具合によって、同じ枚数の補修でも数倍の差が出ます。代表的なケースごとの目安を見ていきましょう。
ここで紹介する金額は、一般的な木造住宅を想定したおおよその目安です。実際の費用は屋根の形状や瓦の種類、作業のしやすさによって変わるため、正確な金額は現地調査のうえで見積もりを取って確認してください。
- 症状:表面に細いひびがあるが、瓦は欠けていない
- 工事:コーキング補修。はしごで作業でき、足場は不要
- 費用の目安:施工費と諸経費を含めて数万円程度
- 症状:飛来物が当たり、瓦が割れて一部が欠けた
- 工事:瓦の差し替え。勾配が急で足場が必要
- 費用の目安:補修本体は数万円、足場を含めると20万〜30万円程度
- 補足:風災の補償があれば、火災保険の対象になる可能性がある
- 症状:割れ目からの浸水で、防水シートと野地板が傷んでいる
- 工事:該当範囲の瓦を外し、下地を補修してから瓦を戻す
- 費用の目安:範囲によって数十万円、屋根全体なら葺き直しで65万円以上
3つのケースを比べると、費用の差を生んでいるのは瓦の枚数ではないことがわかります。足場の有無と、雨水が下地まで届いたかどうかが金額を大きく左右します。ひびを見つけた時点で動けば、ケース1やケース2の範囲で収まる可能性が高くなります。
なお、2階の屋根でも、1階の下屋から安全に移れる構造なら足場を省けることがあります。足場が本当に必要かどうかは、見積もりの段階で理由を聞いておくと納得しやすくなります。
瓦の種類によってひび割れ補修の費用は変わる?
瓦の種類によってひび割れ補修の費用は変わり、特殊な形の瓦や製造が終了した瓦ほど、材料の調達に手間と費用がかかります。補修方法の選び方も、瓦の種類で異なります。
住宅に使われる瓦は、大きく粘土瓦とセメント瓦に分かれます。粘土瓦は釉薬(ゆうやく:表面のうわぐすり)をかけた釉薬瓦や、いぶして銀色に仕上げたいぶし瓦などがあります。セメント瓦は、セメントで成形して表面を塗装した瓦です。
| 瓦の種類 | ひび割れの特徴 | 補修の考え方 |
|---|---|---|
| 釉薬瓦(粘土瓦) | 衝撃による割れが中心で、素材の劣化は少ない | 差し替えが基本。流通量が多く入手しやすい |
| いぶし瓦(粘土瓦) | 衝撃や凍害で割れることがある | 差し替えが基本。色ムラが出ないよう選定する |
| セメント瓦 | 塗膜の劣化で素地がもろくなり、ひびが出やすい | 同じ品が手に入りにくく、葺き替えを含めて検討 |
粘土瓦は形の規格がある程度そろっているため、同じ形の瓦を見つけやすい傾向があります。ただし、古い家に使われている瓦は寸法が今の規格と異なることがあり、ぴったり合う瓦を探すのに時間がかかる場合もあります。
セメント瓦は、すでに製造をやめているメーカーが多く、同じ瓦を手に入れにくいのが難点です。ひびが多い場合は、部分補修よりも塗装や葺き替えを含めて検討することになります。詳しくはセメント瓦の屋根リフォームの費用相場と劣化サインで紹介しています。
瓦の産地や種類がわからない場合でも、心配はいりません。経験のある職人であれば、瓦の形や寸法、裏面の刻印などから種類を見分け、合う瓦を探せます。見積もりの際に「どの瓦を使って差し替えるのか」を確認しておくと、仕上がりのイメージを持ちやすくなります。
瓦屋根のひび割れ補修に火災保険は使える?
瓦屋根のひび割れ補修に火災保険が使えるのは、台風・強風・雪・雹などの自然災害が原因で、契約に風災や雪災などの補償が含まれている場合です。経年劣化によるひび割れは、原則として補償の対象になりません。
火災保険という名前から火事だけを補償すると思われがちですが、多くの契約では風災・雹災・雪災も補償に含まれています。たとえば台風で飛んできた物が瓦に当たって割れた場合は、保険の対象になる可能性があります。保険の仕組みは日本損害保険協会のサイトでも確認できます。
- 被害に気づいたら、日付がわかる形で写真を残す
- 加入している保険会社や代理店に連絡し、補償内容を確認する
- 屋根業者に現地調査を依頼し、被害状況の報告書と見積書を作ってもらう
- 保険会社に必要書類を提出し、鑑定(調査)を受ける
- 保険金の額が確定してから、修理の契約を結ぶ
保険金を請求できる期間には限りがあります。e-Govの保険法(第95条)では、保険金を請求する権利は行使できるときから3年で時効により消滅すると定められています。被害から時間がたつほど、自然災害が原因だと示すのも難しくなります。期限の考え方は火災保険の請求の時効は3年で詳しく解説しています。
また、契約によっては「免責金額(自己負担額)」が設定されています。修理費が免責金額を下回ると、保険金は支払われません。小さなひび1か所の補修では、保険を使えないこともある点を知っておきましょう。適用条件の詳細は屋根修理で火災保険が適用される条件にまとめています。
火災保険が使えないのはどんなケース?
火災保険が使えないのは、ひび割れの原因が経年劣化や施工不良、人為的な破損と判断されるケースです。たとえば、長年の風雨で瓦がもろくなって割れた場合は、自然災害による損害とは認められにくくなります。
また、アンテナ工事の職人が瓦を踏み割った場合は、自然災害ではないため風災の補償の対象外です。この場合は、工事をした業者に修理を求めるのが一般的です。工事のあとに割れを見つけたら、早めに業者へ連絡し、写真で状況を記録しておきましょう。
もう一つ気をつけたいのが、保険申請をめぐる勧誘です。「保険を使えば自己負担なしで直せる」と持ちかけ、保険金の一部を高額な手数料として受け取る業者とのトラブルも報告されています。保険が使えるかどうかを決めるのは保険会社です。契約の前に、手数料や解約の条件を必ず書面で確認しましょう。
瓦のひび割れはDIYで補修できる?
瓦のひび割れのDIY補修は、転落の危険が大きく、瓦をさらに割ってしまうおそれもあるため、おすすめできません。ホームセンターでコーキング材は手に入りますが、屋根の上での作業は専門の職人に任せるのが安全です。
屋根の上は、見た目以上に足場が不安定です。瓦は表面がなめらかで、雨上がりや朝露で濡れていると非常に滑りやすくなります。厚生労働省の安全・衛生の情報でも、墜落・転落災害の防止は重要な課題として取り上げられています。プロでさえ安全帯や足場を使って作業する場所に、慣れない人が上るのは危険です。
- 屋根やはしごから足を滑らせて転落する
- 歩いた場所の瓦を踏み割り、被害を広げてしまう
- コーキングを詰めすぎて排水の通り道をふさぎ、雨漏りを招く
- ひびの奥にある下地の傷みを見落とし、劣化が進む
- 釘で瓦を留めるなど誤った方法で、瓦にひびを増やす
とくに注意したいのが、コーキングによる排水の妨げです。瓦の重なり部分には、入り込んだ雨水を外に逃がすためのすき間があります。ここを埋めてしまうと、水の逃げ場がなくなり、かえって雨漏りの原因になります。
どうしても応急処置が必要なときは、屋根に上らず、室内側でバケツやシートを使って被害を抑えましょう。屋根の上の処置は、業者が来るまでの間にブルーシートで覆ってもらうなど、専門家の手を借りるのが安心です。
業者が来るまでにできる応急処置は?
業者が来るまでにできる応急処置は、室内側で雨漏りの被害を広げない工夫です。屋根の上での作業は危険なので、室内でできることに絞りましょう。
雨漏りしている場所の下にバケツを置き、まわりに雑巾やタオルを敷いて水はねを防ぎます。家具や家電は濡れない場所に移し、コンセントや照明器具の近くで水が垂れている場合は、感電を防ぐためにブレーカーの扱いにも注意してください。
あわせて、雨染みの広がりを写真で記録しておくと、業者への説明や保険の申請に役立ちます。
ひび割れ補修の費用を抑えるには?
ひび割れ補修の費用を抑えるコツは、ひびが小さいうちに直すことと、足場が必要な工事をまとめて行うことです。あわせて火災保険の対象かどうかも確認しましょう。
前述のとおり、補修費用は被害の範囲によって大きく変わります。ひびを早く見つけて部分補修で済ませれば、下地の補修が不要になり、総額を低く抑えられます。台風や地震のあとは、地上から双眼鏡などで屋根の様子を確かめる習慣をつけておくとよいでしょう。
- 台風や地震のあとは、早めに屋根の点検を依頼する
- 外壁塗装や雨樋の交換など、足場を使う工事と同時に行う
- 自然災害が原因なら、火災保険の対象か確認する
- 余り瓦を保管していれば、差し替えに使えるか相談する
- 複数の業者から見積もりを取り、内容を比べる
足場代は1回の工事ごとにかかるため、ほかの工事と同時に行うと負担を減らせます。たとえば外壁塗装を予定しているなら、そのときに屋根の補修も一緒に頼むのが効率的です。漆喰(しっくい:棟の瓦を固定し、すき間をふさぐ白い建材)の詰め直しなど、屋根の別のメンテナンスとまとめる方法もあります。
漆喰の工事費用は瓦屋根の漆喰補修の費用相場で確認できます。
一方で、安さだけで業者を選ぶのは危険です。相場より極端に安い見積もりは、必要な工程が省かれていたり、あとから追加費用を請求されたりする場合があります。費用の安さと工事の内容を、セットで判断することが大切です。
瓦屋根のひび割れ補修で失敗しない業者の選び方は?
瓦屋根のひび割れ補修で失敗しない業者は、被害の写真を見せながら原因と工法を説明し、内訳のわかる見積もりを出してくれる業者です。突然訪ねてきて契約を急がせる業者には注意しましょう。
屋根は自分の目で確認しにくいため、業者の説明をうのみにしてしまいがちです。こうした状況につけ込む悪質な勧誘も起きています。国民生活センターの屋根工事の点検商法のトラブルが増えていますによると、2022年度の屋根工事の点検商法に関する相談件数は、2018年度の約3倍に増えたと報告されています。
典型的なのは「近くで工事をしていたら、お宅の瓦が割れているのが見えた」と声をかけ、無料点検を名目に屋根に上る手口です。その場で不安をあおる写真を見せ、高額な契約を迫ることがあります。訪問販売で契約した場合は、一定期間内ならクーリング・オフができる場合があります。
制度の内容は消費者庁の特定商取引法ガイド(訪問販売)で確認できます。
- 補修前の状態と補修後の仕上がりを、写真で報告してくれる
- 見積書に材料費・施工費・足場代などの内訳が書かれている
- コーキングと差し替えなど、複数の選択肢と違いを説明してくれる
- 瓦屋根の施工実績が豊富で、瓦の扱いに慣れている
- 契約を急がせず、検討する時間をくれる
見積もりは、できれば2〜3社から取って比べましょう。金額だけでなく、どの瓦を何枚交換するのか、足場は必要か、保証はあるかといった点まで比べると、内容の違いが見えてきます。困ったときは、消費者ホットライン「188」に相談する方法もあります。
あわせて、工事後の保証についても確認しておきましょう。補修した箇所から雨漏りが起きた場合に、どの範囲まで無償で対応してもらえるのかは業者によって異なります。保証の期間と対象を書面で受け取っておけば、万一のときも落ち着いて相談できます。
説明があいまいな場合は、契約前に質問して疑問を解消しておくことが大切です。
瓦屋根全体の点検やメンテナンスの時期については、瓦屋根のメンテナンス費用と時期の目安も参考にしてください。定期的な点検を続けることで、ひび割れを早く見つけやすくなります。
瓦のひび割れと一緒に点検したい不具合は?
瓦のひび割れと一緒に点検したいのは、瓦のずれ・浮き、漆喰の崩れ、棟瓦の歪みといった、同じ原因で起こりやすい不具合です。まとめて確認すれば、補修の手間と費用を一度に抑えられます。
台風や地震で瓦にひびが入ったときは、同じ力がほかの部分にも加わっていると考えるのが自然です。割れた瓦の周囲では、瓦がずれていたり、固定が緩んでいたりすることがよくあります。ひびだけを直しても、別の不具合が残っていれば、そこから雨水が入るおそれがあります。
- 瓦のずれ・浮き:揺れや強風で位置が変わり、すき間ができている
- 漆喰の崩れ:棟の下の白い部分がはがれ、中の土が流れ出している
- 棟瓦の歪み:屋根の頂上の瓦の列が波打ち、まっすぐでない
- 谷板金の傷み:屋根の面が交わる谷部分の金属板にさびや穴がある
- 雨樋の詰まり:割れた瓦の破片や落ち葉が詰まり、水があふれている
とくに棟(むね:屋根のいちばん高い部分)は、風当たりが強く、地震の揺れも大きく受ける場所です。棟の漆喰が崩れると、棟瓦を支える力が弱まり、全体が歪んでくることがあります。棟の歪みが大きい場合は、積み直しの工事が必要になります。
点検を依頼するときは、「ひび割れだけでなく、屋根全体を見てほしい」と伝えておくとよいでしょう。不具合をまとめて把握すれば、急ぎで直す部分と、次の機会でよい部分を分けて予算を立てられます。
補修後に瓦のひび割れを再発させないためには?
補修後に瓦のひび割れを再発させないためには、定期点検を続けることと、屋根に上る工事のときに瓦の扱いに注意してもらうことが大切です。原因を減らすことで、次の補修までの期間を延ばせます。
瓦は一度直しても、台風や地震といった外からの力を避けることはできません。だからこそ、被害を小さいうちに見つける仕組みを作っておくことが重要です。一般的には、10年に1度を目安に点検を受け、大きな台風や地震のあとにも確認してもらうと安心です。
- 10年に1度を目安に、屋根の専門業者に点検を依頼する
- 台風や大きな地震のあとは、破片の落下がないか確認する
- アンテナや太陽光パネルの工事では、瓦を踏まない配慮を頼む
- 屋根の近くまで伸びた庭木の枝は、早めに剪定しておく
- 補修の記録と写真を保管し、次回の点検に活かす
見落とされやすいのが、ほかの工事による踏み割れです。電気工事やアンテナ工事の業者は、必ずしも瓦の扱いに慣れているとは限りません。屋根に上る工事を頼むときは、作業後に瓦の状態を写真で見せてもらうよう依頼しておくと、トラブルを防ぎやすくなります。
また、補修の記録を残しておくと、火災保険を申請するときにも役立ちます。いつ、どこを、どのように直したかがわかれば、新たな被害が自然災害によるものかを示しやすくなるためです。瓦屋根の寿命の目安は瓦屋根の耐用年数と寿命で解説しています。
よくある質問
瓦屋根のひび割れ補修については、費用や放置の可否、工事期間に関する質問が多く寄せられます。代表的なものをまとめました。
Q. 瓦1枚だけのひび割れでも修理を頼めますか?
A. 瓦1枚だけの補修でも依頼できます。ただし、職人の出張費や諸経費がかかるため、1枚あたりの単価は割高になりがちです。ほかに傷んだ箇所がないか、あわせて点検してもらうと効率的です。
Q. 小さなひびなら放置しても問題ありませんか?
A. 小さなひびでも放置はおすすめできません。すぐに雨漏りしなくても、割れ目から入った水が防水シートを傷めたり、凍結で割れが広がったりすることがあります。早めに点検を受けましょう。
Q. コーキング補修はどのくらい持ちますか?
A. コーキング材は紫外線や雨風で少しずつ劣化するため、数年おきに状態を確認するのが目安です。長く持たせたい場合や割れが大きい場合は、瓦の差し替えを選ぶほうが安心です。
Q. ひび割れ補修の工事にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 数か所のコーキング補修や差し替えなら、半日〜1日ほどで終わることが多いです。ただし、瓦の取り寄せに時間がかかる場合や、足場を組む場合は、工事全体で数日〜数週間かかることがあります。
Q. 同じ瓦が手に入らないときはどうなりますか?
A. 形や寸法が近い瓦や、解体現場から出た中古瓦で代用するのが一般的です。色が多少異なることがあるため、目立ちにくい場所の瓦と入れ替えるなどの工夫を業者に相談しましょう。
まとめ
瓦屋根のひび割れ補修の費用は、ひびが小さいうちなら数千円〜10万円程度で収まりやすく、下地まで傷むと数十万円以上かかります。被害の広がり方が、費用を左右するいちばんの要因です。
- コーキング補修は1か所3,000〜5,000円程度、差し替えは1枚数千円〜2万円程度が目安
- 足場が必要な場合は、別途15万〜25万円程度かかることがある
- 放置すると雨漏りや下地の腐食を招き、葺き直しや葺き替えが必要になりやすい
- 自然災害が原因なら火災保険を使える場合があり、請求期限は3年
- DIYは転落や踏み割れの危険があるため、専門業者に任せるのが安全
- 写真と内訳で説明してくれる業者を選び、即決を迫る訪問業者には注意する
瓦のひび割れは、地上からは気づきにくい不具合です。台風や地震のあと、または築10年を過ぎたあたりから、定期的に点検を受けることをおすすめします。早く見つけて小さいうちに直すことが、住まいを長持ちさせ、修理費用を抑えることにつながります。

